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2013年7月16日火曜日

ママが知りたい憲法の話 中里見博氏講演(2013.7.11)  報告 №2

先日(7月14日にアップ済み)の報告の続きです。
 
 
【国会議員に対するアンケート調査】
まず、毎日新聞の7月7日付け政党へのアンケート調査の結果をご紹介します。http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130707-00000006-mai-pol.view-000
自民・公明・民主・維新・みんな・生活・共産・社民・みどりの各議員に、9条改正だけと、憲法改正全般とについて意向を調査したものです。
この図の一番色が濃いところが「9条を改正し、自衛隊を『自衛軍』にすべきだ」というところ。
自民党は49%の議員が「賛成」と答えた。半分ですね。
この少し薄い部分は「9条を改正し、自衛隊の役割と限界を明確にするべきだ」というもので、マイルドな9条改変です。これが41%もいます。
自衛隊を国防軍にするという去年4月の「日本国憲法改正草案」に完全に同意しているわけではない議員が、自民党だけでもこんなにいるらしいんです。ただし、選挙向けのリップサービスかもしれませんが。
最後にいちばん薄い水色は「9条の改正には反対」。自民党はゼロ。
公明党をみると、半分が「9条改正、自衛隊の役割と限界明確に」。40%が、「9条の改正には反対」。
民主党は、15%が「9条改正、自衛隊の役割と限界明確に」。80%が「9条改正に反対」。「平和の党」公明党よりも、民主党のほうが9条改憲反対が色濃く出ています。
維新の会。「9条改正し、国防軍に」が30%、「役割明確に」が67%で、9条改憲で97%を占めます。自民党以上のタカ派です。
生活は「その他」という回答が多いですが、半分以上が9条改変反対。共産、社民は100%が反対です。
こちら側が、憲法改正全般についての意見分布です。
自民党は99%が憲法改正に賛成。維新は100%。すごいですね。
公明党も、憲法改正自体には70%が賛成。これがこの結果を伝える記事の見出しになっています。民主党は、賛成24%ですね。50%は反対だそうです。
直近のデータなので、お伝えしておきました。
 
【憲法改正の要件─議席の3分の2というハードル】
参議院選挙の事前予測報道では、自民、維新、みんなの三党だけで、参議院議員の3分の2を超えるのは難しそうだ、となっています。でも公明党を入れれば、3分の2を超えます。
この事前報道というのは、かなり正確で、だいたいその通りの結果になってしまいます。それが政治を変えたい市民に危機感をあおってくれればいいのですが、事前報道の結果をみて、あきらめちゃう面もあって、事前報道には善し悪しがありますよね。
 
現在すでに、自民・維新・みんなという「改憲タカ派」の三政党で、衆議院はもう76%の議席を占めているんです。
日本国憲法は、96条の改正手続き規定で、衆参両院それぞれの総議員3分の2以上、つまり66.6%以上の賛成で、憲法改正案を議決できる、としています。
ただ、法律の場合は国会が議決したら、それだけで法律になるんだけれど、憲法の改正だけは国会が議決しただけでは効力を持ちません。国民投票にかけないといけないと96条に定められています。憲法改正については国民に承認するか拒否するかの最終的な決定権があるんです。
衆議院では「3分の2」のハードルを優に超えていますが、参議院がまだそのハードルに達していません。今度の参議院選挙の結果、もし、この三党で3分の2の議席を超えてしまったら、憲法を改悪する何らかの提案がなされることになるだろうと思います。ですから、今度の参議院選の結果が非常に重要になるわけで、憲法改悪の帰趨を制する選挙になるのです。
 
【憲法改悪を止めるには?─4人の方の発言から】
こういう非常に危機的な状況があるんですけど、それを止めるにはどうすればいいか、ということのヒントになりそうなことを次にお話しします。4人の方の発言を引用したいのですが、最初は湯浅誠さんです。
湯浅さんは貧困問題で数年前から全国的に有名になった方で、かれは、「2年以内に『議論できる空間づくり』と、『政治を語る新しい作法』が必要だ」と言ってます。
武藤類子さんは、ご存知でしょうか。福島の方で、長年福島で反原発・脱原発運動をしてこられた方です。3.11のあと、2011年の9月だったと思いますが、東京の大きな集会ですばらしいスピーチをされて、一躍、時の人となった方で、「『自信を取り戻し』て『横とつなが』ろう」と言われてます。
これは原発のことを言っているんですけど〈改憲をどう押しとどめるか〉っていうことについても、そのまま当てはまるだろうと思うんです。
加藤周一さんは故人ですが、「9条の会」の呼びかけ人のひとりで、「小さなグループが横につながって大きな力が発揮される」ということを言っている。
ご存知の、小出裕章さんは「『運動』などしていただかなくてもけっこうです。でも、『身近な差別にだけは抵抗』してほしい」ということを言われてます。
 
【1%でも多くの人が話題にできるように】
この中で、湯浅さんの言われていることがとても重要だと私は思ったんです。
最短で、次の衆院選または次の次の参院選のある2016年にも憲法改正の国民投票がされる、いや、憲法改正の国民投票だけが単独で行なわれるなら、もっと早いかもしれない。そのとき、「多くの人が議論できる空間をどれだけ増やせるか」ということが決定的なんだ、とかれは言います。
「最悪のシナリオを考えれば、国民投票が2~3年のうちに行われることは十分にあり得る。そのときに、多くの人がこのことをどう話題にできるか。1%でも多くの人の関心を高め、人々が話題にできるようにし、本当に何が問題なのかについて議論できる空間を2、3年のあいだにどれだけ増やせるか。政治を語る新しい作法が必要だ。具体的にはいろいろなシチュエーションを想定して、無理がないように話を切り出す『最初の一言』を募集し、ワークショップをやる。そういう情報を集めて冊子もつくりたい。」
これは岩波書店の出している雑誌「世界」の今年の5月号の対談の中で言われていたことなんです。
まず、これまで原発とか憲法とか、極めて政治的な話を、一般の人とうまくできない、という現状がありました。そういうことを語ると、さあーっとみんな引いていってしまう。でも、憲法改正の国民投票をするというときにはそういう状況では絶対にだめです。だから、かれは「政治を語る新しい作法が必要だ」といういうのです。
国民投票では、1%の差が勝敗を分けるわけですよ。だから、どれだけの人が、本当のことを、自分の頭で考えて判断できるか、ということが決定的に重要になります。
だから、憲法の大切な価値を守りたいという市民の側は、これまで対話をあきらめたり、敬遠していたりした、自分の周辺の人たち、例えば、近所の人、職場の人、遊び仲間、そういう人たちと改憲問題について話せないと、大変なことになります。例えば、子育て中のママ友だちが、公園で子どもを遊ばせていてちょっと時間ができますね。そこでいきなり改憲問題の話を切り出すといっても、実際には難しい。そこで、話を無理なく切り出す「最初の一言」というのが重要になる。バイト先の同僚とか、具体的なシチュエーションごとに、たとえ意見が違ったとしても険悪なムードにならないで、憲法改正問題について話題にできるように、「最初の一言」を募集するとかれは言っているんです。
私もこれには、すごく共感できます。選挙でいえば、支持政党なしという無党派層が有権者の最大の割合を占めていて、無党派層の浮動票が選挙結果を鍵を握ります。それと同じように、憲法改正国民投票の時も、護憲派にも改憲派に属さない人々の層、隣近所や職場の普通の人々もそうだと思うんですね。そこにどうアクセスし、そして種をまくか。そして、憲法改正問題でも、態度を決めてない「無党派層」の少しでも多くの人に、憲法の価値を守るほうの意見を持ってもらうかがとても重要になってくる。
 
【バーンアウトしない運動を息長く続ける】
『日本の青空』という映画をご存知ですか。日本国憲法は、実は日本人が作ったとさえ言える「自主憲法」だったという、憲法制定にまつわる「秘話」を描いた映画です。とてもいい映画で、今年5月の上映会で久しぶりに観たのですが、この映画を観て、「日本国憲法に誇りを持てた」という感想を述べるかたがけっこうおられるんですね。
それで、私の子どもが通っている学校の保護者の方と、小さな上映運動をやっていきましょうということになって、5人から10人くらいでその映画を観ての感想や、今の政治状況についてどう考えているかについて、話し合いをすることにしました。これまで2回その集まりを持ったんですけど、この集まりのねらいは、無理なく、息長く続けられるということと、顔の見える範囲内で、直接の対話を大切にする、ということです。
憲法改正の国民投票まで、あと何年かはわからないけれど、まだ時間があります。そのあいだに、簡単にバーンアウトしてしまわない運動、湯浅さんが言っているような運動を私たちがしないといけないんだと思ってます。
そういう意味で、今日の集りも、私にとっては、その一環だと思ってます。ここでいろんな話をしたら、今度はみなさんが、それで知ったことや考えたことを、友だちや周囲の方に伝えてくださることを願っているんです。もう、そういう運動しかもう、私たちにはないんです。
例えばマスコミに期待するとか、政治家に期待するということが、本当に難しくなっています。政治家は、小選挙区選挙のもとで、せっかく私たちが投票した票が議席に結びつかないっていうことが起きているんです。
 
【政治家に期待できない理由─50%は「死票」になっている】
先の総選挙で、たしかに自民党は大勝したけれど、しかしそれはたったの4割の得票で8割の議席を取る、小選挙区選挙の「詐欺行為」によって、衆議院全体の6割の議席を取ってしまったわけですよ。
それで、小選挙区選挙では、有権者の投じた票の50%以上が「死票」だったんです。全国で投じられた票の半分以上は議席に結びつかず、「死んだ」んです。それは代表されなかったんです。
これは許しがたいことであって、選挙権というのは「主権的権利」、つまり主権者である国民が主権を行使するという意味を持つ権利であって、「主権的権利」という位置づけを与えられています。
「主権的権利」というのは、いろんな権利のなかで最も重要な権利のひとつなんです。それがこのように、ゴミ箱に捨てるように、国政選挙で捨てられている。しかも、切り捨てられている有権者の声のほとんどが、いまの政治を変えたいという少数派の声です。そのようにして、私たちの声を代弁してくれるはずの政治家の力が削がれている、という問題がいまの政治にはあるのです。
もし先の総選挙が、すべて比例代表選挙、つまり得票率に応じて比例的に議席を配分するという選挙だったら、どうだったでしょうか。つまり全480議席の一部、180議席を争った比例区の得票率を、そのまんま480の議席に配分してみたらどうなるか。自民党は、実際には小選挙区と比例区を合わせて294議席取りましたが、もし比例区の得票率で自民党の議席を配分したら、132議席になっちゃうんです。これが、自民党の本当の実力と考えるべきなんです。
未来の党(現、生活の党)は、実際には9議席だったんですが、27議席と3倍に増えます。
社民党は、2議席しか取れなかったんですけど、12議席に増える。
共産党は8議席だったんですけど、29議席になるんです。
つまり、明確な脱原発政党である、未来・社民・共産が、実際は合わせて19議席だったんですけど、68議席に増えるんです。
それは、少なくない存在感を示すことができるようになると思うんです。実は、これが実際の国民の民意だし、市民のパワーだと思うんです。
でも、いまの選挙制度では、そうはならない。政治を変えたいと願っている国民の声が国家に届かず、その声を代弁すべき政治家も手足を縛られています。
大手の商業マスコミにも、期待できない。
となるともう、期待できるところがないんですよ。自分たちでやるしかない。


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